「オンジ（遠志）」について
- こころ 漢方相談薬局・はり灸治療院
- 2017年11月17日
- 読了時間: 4分
こんにちは。
相模原市橋本にある、漢方・はり灸の《こころ》です。
今日は話題の「オンジ（遠志）」についての内容です。
薬局は医薬品を販売する際、複数の生薬を組み合わせた「漢方薬」についての法的な整備はできていますが、１種類の生薬から作った医薬品については法的な整備が整っていませんでした。
そこで2015年に、厚労省は一般用医薬品として販売するための、製造方法や効能・効果などについてのガイドラインについてを作り、整備しました。
その医薬品の１つとして「オンジ（遠志）」という生薬から作った医薬品があります。
「オンジ（遠志）」を使った医薬品についてはガイドラインでは「中年以降の物忘れの改善」の効能等が設定されたため、相次いで新商品として上市され、TVCMやドラッグストアでも目にすることが増えました。
この「オンジ（遠志）」を成分とする商品群ですが、現在医療機関等でトラブルが起きています。
そしてそのトラブルが拡大しないように厚労省より「オンジ製剤の広告等における取扱いについて」
◎ 効能等が承認された範囲を超えると暗示させることは、厳に慎むように
◎ 認知症の治療又は予防に用いる医薬品ではない旨の記載の付記又は標榜を必ず行うこと
以上２点について留意するようにという内容の文書が出されるに至りました。
これはあたかも「認知症を改善する」ような広告が氾濫したことによると考えられます。
「オンジ（遠志）」は主に「健忘」に対しての効能を持つ生薬として使用されてきましたが、ガイドラインによって承認された効能・効果としては、加齢による正常な範囲での「物忘れ」であって、「認知症の予防または治療」に関する効能等ではないとうことです。
「オンジ（遠志）」はおもに中国北部を産地とする多年生草木「イトヒメハギ」の根、または根皮を乾燥させた生薬で、「遠志」の名前の由来は「遠く（長く）志を保つことができる」という効果がそのまま名前となったといわれており、不安、動悸、不眠、健忘など様々な効果があるとされています。
「オンジ（遠志）」は、漢方の処方としては「帰脾湯」「加味帰脾湯」「定志丸」「安神定志丸」「朱砂安神丸」などの処方に使用されています。
「オンジ（遠志）」単独の製剤にしても、「オンジ（遠志）」を使った漢方薬にしても、「認知症」そのものを改善することはできませんが、認知症では、妄想・幻覚・暴力・徘徊・睡眠障害・抑うつ・うわごと・ふらつきなどの「周辺症状」といわれる症状を改善することは可能です。
漢方の素晴らしいところはその複雑な組み合わせの妙であり、からだ全体のバランスを考えながら使用するところにあります。漢方で使う場合は「オンジ（遠志）」単独で使うことは少なく、他の生薬と組み合わせて使用します。一人ひとりの体質やその時の症状に合わせてお作りすることで、はじめて本来の効果が期待できます。「オンジ（遠志）」単独でも効果は期待できますが、組み合わせによって相乗効果が得られる
「物忘れ」が認知症によるものなのか、そうではないのかの判断は時に難しく、西洋医学的な診断が必要になります。
もし「物忘れ」が気になるのであれば、一度西洋医学的な診断を受けた上で「オンジ（遠志）」製剤、または漢方を試していただきたいと思います。もしくは「物忘れ」の症状が出る前から、体のバランスを整えるための漢方をお飲みいただき「認知症」や正常の範囲の「物忘れ」の予防としてのご利用をおすすめします。
今回の広告トラブルは企業戦略に振り回された形になりましたが、「オンジ（遠志）」自体は漢方薬をお作りする上で欠かすことができない非常に重要な生薬であり、上手に使うことで私たちの生活をよりよくできるものです。
その使用方法についてはぜひ専門にしている薬剤師にご相談下さい。
漢方・はり灸の《こころ》では相談料は無料です。
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